死亡率50%…高齢者の低体温症とは?
いまや子供の3割、高齢者の5割が低体温といわれます。低体温の増加とともに低体温症も問題になっています。高齢者の低体温症は、日常でも起きやすく、知らぬ間に進行し、いったん低体温症になってしまうと死亡に至る怖い特徴があります。その理由を解明します。
屋内でも低体温症に
低体温症とは、寒冷状態に長時間さらされることで体の内部の深部(直腸)温度が35度以下に低下して放っておくと死に至る疾患のことです。2011年の日本救急医学会による低体温症の調査では、低体温症と診断された症例の平均年齢は70.4歳、症例の8割以上は60歳以上の高齢者という結果がでています。また症例の7割は屋内での発症でした。このように高齢者に低体温症が多いのは、なぜなのでしょうか。高齢とともに、熱を生み出す機能を持つ筋肉量が落ちるため、平熱は低くなり、低体温の人が増えます。また、老化によって血管が硬く変化してしまい、寒いときに交感神経の命令により血管が収縮して体温を維持することができなくなるのです。医学的には気温が18.3度以下になると低体温症の症状が始まりやすいと言われますが、高齢者は感覚が鈍っているため寒さに関しての自覚がなく、気づかずに発症してしまうケースが多いのです。さらに、いったん発症してしまうと、代謝機能が鈍っているため、体温を上げて生命機能を回復させることが難しく重症化して死に至る確立も高いのです。
高齢による複合リスク
高齢者の中でも循環器疾患や精神疾患、内分泌疾患などを持つ人は、低体温症の危険が高まります。糖尿病や内分泌系の病気は、栄養をうまく熱に変えることができず体温調節ができません。食事制限による低栄養や服薬なども体温低下に悪影響してきます。体温が下がることで心臓発作、腎機能障害、肝臓障害などが起こりますが、耐える体力も低いので死亡する割合も高いのです。このような高齢者の低体温症を防ぐには、室温を19度以上に保ち、高齢者の身体を厚手のソックスや下着、熱が逃げやすい首周りや頭をマフラーやキャップなどで保温することが大切です。体温が下がると利尿作用が働いて脱水症状になりやすく、血流が悪くなるので体温が上がりにくいため、暖かい飲み物で水分補給することが重要です。熱代謝を良くするためのカロリー摂取や良質たんぱく質の摂取も奨励されます。また、自覚しにくい高齢者に変わって、家族など周囲の人が、体温低下の兆候にいち早く気づき対処することが求められます。高齢者にこんなサインがあったら要注意です。震えがある、手足が冷たい、皮膚が青白い、言葉がもつれる、呼吸が浅く遅いなどのサインに気づいたら、医療機関への連絡が望まれます。
まとめ
高齢になるほど代謝機能は低下し、低体温、糖尿病、内分泌系疾患などが相乗して低体温症で死亡するリスクがとても高くなります。本人の体温低下に対する自覚も鈍くなっているため常に保温を心がけ、周囲の家族がいちはやく前兆を察知することで低体温症を未然に防ぐことが大切です。