低体温で死亡するケースはあるの??
東日本大震災の津波の被害で、多くの人が発症し死亡したことで問題となったのが低体温症です。体内温度が35度以下に低下してしまうことで発症し、発症後の死亡リスクが高い低体温症は、冬山遭難や災害などに限らず冷房の効いた室内でも起こる身近な疾患です。なぜ死亡に至ってしまうのか、その原因と予防に迫ります。
死亡率が高い低体温症
平熱が35度台という低体温は、近年、女性や高齢者などを中心に増加傾向にあります。しかし、直接死亡につながるのは、低体温ではなく低体温症という疾患です。脇の下で計るのではなく、体内の中枢温度(直腸体温)を基準にして35度以下に低下した病態をさします。主に寒冷環境にさらされることにより体温が必要以上に奪われると、体温調節機能が働かなくなり、体温低下とともに筋肉が硬直して臓器や心肺などの生命機能がすべて低下し、28度以下で昏睡仮死状態に陥ってそのまま死亡してしまいます。死亡率が高い理由は、体温低下に気づきにくいこと。体温低下が進行すると意識障害がおこり、自覚症状がないうちに重症化してしまうこと。意識障害が起こりはじめたときには、ちょっとした身体への刺激が不整脈を起こしてしまうので、応急処置が難しいことなどが上げられます。特に乳幼児は、体表面積が小さいため急激な体温低下が起こりやすく危険です。また、高齢者は緩慢な体温低下に気づきにくく、代謝が鈍いため体温を回復しにくいので死亡に至るケースが多いと考えられます。さらに、甲状腺疾患や糖尿病などの疾患がある場合は、複合的に死亡率が高くなるので注意が必要です。水の中では空気の20~25倍の速度で体温が奪われます。川泳ぎやダイビングなどの長時間の遊泳も危険を伴います。
低体温症をくいとめるには
低体温症にならないようにするためには、衣服などで日常的な体温調節を心がけること、運動やたんぱく質の多い食事により代謝機能をアップすることが重要です。また、低体温症の死亡リスクを回避するには、止められない震えがはじまったら危険な低体温症の兆候と早期に判断し、保温や加温に努めることが肝心です。湿った衣服を脱がせ毛布をかけるなどして熱損失を回避し、外部から電気毛布やカイロなどで暖めたり、38~40度の温浴をさせたり、温かい飲み物を与えたりすることが有効です。震えが止まったり本人の意識が朦朧としてきたら、できるだけ動かさず医療機関にすみやかに搬送することが望まれます。重度になると呼吸数、血圧、心拍数の低下が著しく素人目には死んでいるように見えますが、あきらめず医療機関で心肺蘇生法をはじめ専門的な集中治療などが行われます。低体温症になりやすい高齢者や乳幼児などの場合は、家族がいち早く体調異変に気づいて対処する必要があります。
まとめ
普段から低体温の人や高齢者は低体温症に要注意です。いったん中枢体温が低下してしまうと急速に症状悪化が進行してしまいます。低体温症の兆候である震えを見逃すことなく、いちはやく保温・加温の対処をすることで、怖い低体温症を水際で防ぎましょう。